人物像をつくるということ

○映画「交渉人 真下正義」が終了して、「容疑者 室井慎治」が公開になったので早速。
池袋HUMIXは1日が1000円デイなので行って見たら、最終8時の回なのに混み混みだった。
○まず、前作の続きという意味では時間軸は続いていたわけですが、前作の謎を解明するものではありませんでした。
結局真下正義編の最後の謎「犯人の生存に関して」は謎のままという結論。
前作の時間軸から2ヶ月経過した時点での話でした。
○作品傾向として述べると、真下正義が事件性を前面に押し出した「24H」風のドラマだったのに対して、室井慎治は「踊る大捜査線」という作品を引き継いだドキュメント風の演出映像みたいなものだったのかな。
「踊る~」のドラマがあり、スペシャルがあり、MOVIE1、MOVIE2を経てこの作品にたどり着いた、というのがこの映画の印象です。
MOVIE1の事件関係者がこの映画でキーとなる役割をしていることもあって、このシリーズをみてきた人には最大限に楽しめるようになっていると思います。勿論室井ファンに限らず。
ただ、真下正義のときより格段に事件の面白さは減少しているというか、ほぼ押し殺された状態の儚い真相なので、CMどおりの期待をする非ファンは見た後であんまり非難しないで欲しいと思う・・・。
あくまで「室井という男の延長軸」という観点での映画になっています。
そういう意味では「真下という男」はトラブルを招く天才だったともいえるのかも。
○室井ファンには非常に辛く悲しい映画になっていると思います。
「踊る~」シリーズでほのかに漂っていたラブストーリーとしての側面も、今回は室井の悲恋という形で再現されています。
今回の主役である室井を押しのける存在感だった小原弁護士=田中麗奈と室井の関係も、小原弁護士側から見るとラブストーリーのような結末という演出になっているような。
室井が殴られたり傷ついたり、憔悴して崩れそうなことも室井ファンには耐え難い映像かも。
ドラマシリーズから虐げられている室井さんですが、今回の不幸っぷりは本当に涙を誘います。
○警察権力に失望しながら、青島との約束を果たそうと「正しい道」を進もうとして挫折する室井の姿がうまく書かれていると思いました。約束そのものにこだわる様子は、今作ではあまり積極的には描いてはいませんが。
権力者として上り詰めなければいけない組織そのものが、室井にとっては永久の敵になりうるわけで、しかし正義の人である室井は犯罪そのものを憎み真相を解明しようとする姿勢を貫くわけです。
それがまた組織上部からの顰蹙を買い、今作では「人としてしてはいけないこと」をしないようにと貫くあまり警察を追われる「容疑者」として室井が描かれていると思います。
○室井役の柳葉敏郎は勿論、室井を追い込む天才でありながら狂気の弁護士灰島役の八嶋智人、小原弁護士の上司で圧力に負けた無気力な弁護士津田役の柄本明が特によかった。
八嶋智人のタガが外れた生きっぷりというか、キルゲーをやり続ける法の信奉者のキチガイっぷりがよかった。
柄本明の飄々とした重みのない口調のいい台詞が、軽い響きを伴って頭に残るのもよかったです。
室井の重さと対比すると「凪」の津田弁護士、「躁」の灰島というところなのだろうか。
灰島に脅されながら夕日が沈み室井の意思が折れようとしている部分を、津田が「彼の勇気の灯が消えようとしている」と
ぼそっと言うシーンがあったんですが、演出としてうまい部分だなあと思いました。
○田中麗奈=小原弁護士が実質主役だったようなものですが、無理して体育会系を演じている感じとか、言葉の言い方のキツさ、小生意気な娘としてはちょっと演技力が足りないような感じが相まって、「踊る」のレギュラーに数えるのはちょっともったいない気が。
元陸上部、ということでいつも走っているキャラということだったみたいだけど、フォームが慣れていないせいか崩れていて爽快感はあまりなかった。
表情というか、元々の顔が固いせいもあるのかもですね。
彼女を気に入るか気に入らないかで映画の評も分かれてくると思います。
私は見終わったあとは割とよかったと思いますけど、「踊る」初期の柏木雪乃のような違和感が拭えなかったのも事実かな・・・。
ナレーションが室井ではなく彼女であるのも意味があったと思いますが、見る側が思うことは結構好みで分かれるだろうと思います。
○前々作「レインボーブリッジを閉鎖せよ」で失態をしでかしまくった沖田仁美=真矢みき、TVスペシャルから室井を蹴落とそうとしてるのか助けようとしてるのか意味不明な新城賢太郎=筧利夫は今回大活躍で、特に真矢みきは権力を失ってなお折れずに戦う室井をほぼ完璧にサポートしています。
部下に愛される室井は階級や立場が段々下ろされてきているというのが今までの流れでしたが、彼に味方する部下が彼より権力を持つ場合どうなるのか?ということも今回の新城=筧の出方で十分に見れることと思います。
思わぬ複線がドラマから続いている上に、警察各種の上司も同じ俳優陣、更にスリーアミーゴス=湾岸署の幹部も一応登場します。
真下と雪乃の恋愛の結末もさりげなく書いてあって、スリーアミーゴスの予期せぬ動きに映画館にいた人が同じ場所で同時に笑い出しちゃったりなんかしたりして。それを無表情に流す室井にまた笑っちゃったりなんかして(撮影時は柳葉さんは笑ってしまったらしいけど)。
男闘呼組の先輩である相川翔が現場刑事役として室井を支える場面も少なくはなく、先輩相手に部下を扱う演技をしなければいけない柳葉さんも大変そうとか思った。
○最初にも書きましたが今回の事件は、裏がというよりも周囲の状況が謎を加速させたタイプのものだったので、真下正義より「事件ドラマ」より「人間ドラマ」であり、結末は酷く儚いものです。
こんなもののために室井はこれほどまでに深く傷つかなくてはならなかったのか?という疑問も沸きあがると思います。
ただそうであっても、今の立場を捨ててでも真実に迫るために警察官として自分を全うする室井の姿に感動する・・・と思う。
室井を引きずりおろす為に暴かれた室井の過去の悲恋は、ファンは泣いてしまうかも。
元々そうですが、室井の端的な物言いが簡潔でありながら詩的で、だらだらと長く不幸を訴える類の恋愛映画よりよほど悲しく見えると思います。
○グッズ買いにうろうろしてたら、殆どファンは男ばっかりという室井を取り巻くファン事情の現実。
3000円台買う男性とかは、気味悪さを通り越してを感じました。
○やはり真下正義よりは、万人ウケするものではなかったので色々書きましたが。
踊る大捜査線を理不尽な思いで見続けた人々は是非見たほうがいいと思います。
ただ現場を走り続ける青島を書いた本編とは違い、多くのものを背負いながら一人で戦わなければいけない室井を書いた映画として、見届けるのもいいんじゃないかなと。
これで踊る大捜査線という大きなプロジェクトについてまた違う側面から愛してくれる人が増えるといいと思います。

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