[海外ドラマ] JEKYLL

どうしても書き残しておかなければ! という面白さのドラマを見た。
UK製作のミニドラマ「ジキル」。
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ジャンルとしてはホラー? サスペンス?
サイコパスが出てくるのでサイコサスペンスでもいいのかもしれない。
かのロバート・スティーブンソンの名作「ジキル博士とハイド氏」の続編として製作、と銘打ってはいるが
個人的にはこれはパロディでもありオマージュでもあると思う。
劇中に作家であるロバート・スティーブンソン本人を「罠の仕掛け役」として登場させたり、
そもそも主人公の祖先となったジキル博士を登場させるところは非常に俯瞰的な脚本だと思った。
[内容]
トム・ジャックマン博士は研究機関に勤めるごく普通の中年男。
愛妻のクレア、双子の息子たちに恵まれて平凡に暮らしているはずだったが、
夜な夜な自分に起こる異常な事態に気付いたトムは
夜を過ごすための一軒家を借り看護婦のキャスリンを雇い、
寝ている自分を録画監視するという生活を始める。
カメラの中に映っている凶暴で異常な自分、それを抑えきれない事実と恐怖に耐えかねたトムだったが
とうとう妻と子供にもその異常なもう一人の自分の存在を知られることとなり、
「家族を殺してしまう」という思いから逃亡する。
が、謎の組織がトムを追ってくる。
トムのもう一人の人格を目覚めさせるためなら何でもしようとする組織の存在と、
その組織を手引きしていたのが自分の長年の親友であるピーターだったことが判明する。
トムは寝ずに過ごすことでもう一人の自分を抑えようとするがそれも長く続くはずがなく、
妻に完全に知られた上に組織に囚われてしまうこととなる。
すなわちトム・ジャックマンがジキル、その彼の裏人格がハイドという配役。
妻のクレアは中盤から非常に食い込んでくるんだけど、
「発端」という回で何故ハイドが出現したかが明かされる。
クレアが不良に絡まれ目の前で辱めを受けるのを見ていたトムは何も出来ず、
その夜とうとうトムの体を乗っ取ってしまったハイドが不良を殺しに行くことで顕現する。
結局「ハイド」という人格の源は「家族を守りたい」というトムの羨望が抑圧となって、
サイコパス人格として出現したものだった。
トムを「パパ」と呼び子供のような無邪気さで行きずりの男女と関係を持ち、
「パパの子供たちを殺してやる」と呟くハイドはトムの家族を殺せない。
「組織」は最後まで謎のままなんだけど、キーとなる女性が出てくる。
一人は組織のトップ、「ミス・アタスン」。
謎の組織である「クレイン&アタスン」の取締役だ。
クローン技術で莫大な報酬を稼いでいる表家業、
裏家業はジキル博士をオリジンとしたクローンを重ねハイド氏の顕現を待つという邪悪なものだ。
「何故ハイド氏を待つのか?」という焦点については語られないものの、
エンディングで何となく分かるようになっている。
もう一人の女性は妻であるクレア。
クレアは夜な夜な出て行く「トム(人格はハイド)」が浮気でもしているのではないかと疑い、
女性探偵のミランダ、その助手のミンを雇って調べさせる。
結果的にミランダの調査からハイドの存在や組織に行き着き、
ミランダはほぼ完璧に近い推理で「ジキル博士がクローンを重ねられた結果、トムが成功例ではないか」
ということを言い当てるんだけど、
実はオリジンのジキル博士が愛したメイド「アリス」のクローンがクレア。
トムがクローンの結果であるというのは誤りで、
トムは「オリジンのジキルから生まれたハイドが女性遍歴を重ねることで生まれてしまった傍系の子孫」だった。
そんなトムに「ハイド」を生まれさせたのがクレア。
オリジンのジキル博士に「ハイド」を生まれさせたのがメイドのアリスで、
それがアリスのクローンであるクレアによってまた叶えられたことになる。
100年越しの愛というか、そこまで再現されていいのかよ的な脚本なんだけど
ハイドのキャラクターがどうしてもクレアに逆らえないという演出がそれを補強する。
ハイドの恐るべき感覚は良く分からない。
トムを消してしまおうともするし、逆にトムをいとおしみ哀れんだりもする。
家族に害を成すものは簡単に殺してしまう。
武器があれば武器で、武器がなければ自らの手や歯で。
息子を襲おうとするライオンですら噛み殺して遠くに投げてしまう。
クレアや子供のことは威嚇はしても殺さない。
組織に捕まり、ハイドを活性化させようとする組織の思惑通りトムが消えてしまっても、
クレアを殺そうと見せかけて逃がしてあげようとするやさしさがある。
「ハイド」についてはトムの母と名乗る女性がクレアに漏らす一言がある。
『ハイドは”愛”なのよ』と。
家族を守りたいトムにはそうする度胸や行動力がなく、
それを補うためにハイドが生まれたと考えると確かにそうなのかもしれない。
トムとハイド氏は分かれて生まれたけれど段々とひとつになっていく。
ハイドを恐れ戦おうとするトムと、それを脅かそうとするハイドという図式から、
トムの記憶を吸収したハイドが少し変わるところから段々と狂っていく。
トムはハイドを制御できるようになったし、ハイドはトムを必要だと考えるようになる。
それぞれが受けた外傷はそれぞれの人格が引き取ることになり、
ハイドが受けた傷をトムが受けることはない。
ラストはミス・アタスンがハイドを殺そうとする。
ミス・アタスンは「完璧なるハイド」を手に入れるために100年以上その顕現を待っていたし、
どうもトム(というかハイド)を殺したくないようだったが、
組織の脅威になるなら仕方がないと考えたようだ。
ミス・アタスンの部下には軍隊崩れの大佐が指揮する傭兵部隊がついていて、
とても逃げられる状況ではなくなる。
運悪くクレアは鉄格子に閉じ込められ、
その双子の息子は生命維持装置付きの箱に閉じ込められて
ミス・アタスンの命令で生命維持装置が切られてしまう。
ハイドはどんなに銃弾を受けても立ち上がり、息子たちの生命維持装置を戻そうとする。
その姿はちょっと異様なくらい執念に満ち溢れているんだけど、
普通の人間はそんなに撃たれて生きてたらゾンビですよというくらい弾を食らい、
ミス・アタスンに見放されてしまうのだ。
それを見ていた大佐は何故か心変わりしたようで、
倒れて死んでしまったようなハイドを見ながら生命維持装置を戻してくれる。
「いやあんな長い時間生命維持装置止まってたら普通死ぬって」という長さで閉じ込められていた双子たちは何故か無事。
クレアはてっきりトムが死んでしまったと思うんだけど、
「ハイドの傷はトムは受けない」という法則通りトムだけ生還する。
トムもクレアも恐らくハイドは死んでしまったのだと悟るが、
どうも双子の様子がおかしい。
クレアをじっと見つめる双子の片割れが
あのハイドそっくりに笑い、指を立ててウインクする。
ここで恐らく「ハイド2代目」が双子に分かれて遺伝したであろうということが伺える。
確かにトムはジキルの傍系なんだから、
「完璧なハイド」のジキルであるトムの子供がハイドである可能性は充分にあるよなあ…。
トムの傷も治りつつある日、
トムはどうやら「トムの母」を名乗っていた女性に会いにいく。
秀逸だと思ったのがこのエンディング。
トムの父はどう見てもジキルに似ていない白人男性だという写真が残っていた。
ジキル博士の子孫は本当にトムなのか、
と考えたとき「親は父親だけではない」ということに思い至る。
つまりは、「トムの母」がジキルの傍系であり、同じように多重人格者なのだった。
トムの母はつまりジキルであり、ハイドはあのミス・アタスン。
ミス・アタスンが組織を率いて「完璧なハイド」を捜し求めたのは、
結局自分が「トムの母のハイド」だったからということなのね。
トムのハイドのように、ミス・アタスンが牙を剥いて襲い掛かるところで暗転、スタッフロール。
このラストを見て思ったことは「ああ、また最初から見たいな」ということだった。
このドラマで特筆すべき点は、トム/ハイドを演じているジェームズ・ネスビットの演技のすばらしさ。
原作である「ジキル博士とハイド氏」は何度か映画化、ドラマ化されていて
勿論その中でもジキルとハイドは一人の俳優が演じる通例になっているようなんだけど、
ジェームズ・ネスビットの切り替えっぷりは非常に恐ろしかった。
トム・ジャックマンを演じるときは潤いのないくたびれたただのオッサンなのに、
ハイドに切り替わった瞬間若く、張りがあり、感情が分かりやすい男性に変貌する。
特殊メイクや外見の変更で誤魔化したりもしない。
同じ俳優なんだけど、その人格の切り替えでよくぞここまでというほど変わってしまう。
これは非常に見ごたえがあるし、本当に面白かった。
ジム・キャリーの「マスク」や、映画「コンスタンティン」に出てくるルシファーを演じたピーター・ストーメアのような快演だった。
こう、今まで見ていた地味な人間の顔の筋肉が
ぐにょーんと見たこともない方向へ動く感覚が楽しめると思う。
妻のクレア役はアメリカドラマ「レバレッジ」でソフィーという詐欺女優も演じていたジーナ・ベルマン。
痴女というわけではないんだけど、
どうも過剰にトムを誘惑したり泣き落とししたがるキャラクターだなと思っていたら
ハイドが現れてから恐ろしく急変。
あのハイドをビンタでぶったたき尻に敷く恐ろしい奥様になっている。
まあ彼女が一番気にかけていたことは「ハイドが手当たり次第に女漁りするときに避妊具を使っていたか」ってことらしいけど。
ハイドがニヤニヤしながら「俺はあんたの夫じゃないね。男根を共有してるだけさ」と煽っても
それがわたしの物だって言ってんのよ!」と逆ギレ。
いや…まあ何を誰が所有しようとも自由ですとも…。
総括するとシナリオとしてチープな割に非常によくできていて、
ああ面白かったなあと強く思わせてくれた逸品だと思う。
若干コメディー調になるところもあり、もしかするとこの辺は好みが分かれるかもしれない。
全6話のちいさめなドラマなので、
映画を見るには時間が余りドラマを見るには時間が足りないといったときに一気に見れる面白さだ。
「ジャックマン家のジキルとハイドな双子」という続編でもいいし、
「帰ってきたハイド」でもいいんだけど続編が製作されるようなら是非歓迎したい。

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