[映画]世界よゾンビになれー、な「World War Z」

前回パシフィック・リムの記事を公開して「何か熱病で苦しむ人のたわごとみたい…」と思いながらテンドー・チョイさんの役のクリフトン・コリンズ・Jrさんが宇宙人トンデモ系ドラマ「The Event」(シーズン1で打ち切り)で準主人公的な役の人だったことに気づいて愕然としたりしていました。まあ13話あたりで死ぬんですけど。
でもパシフィック・リムのテンドーさんの方がイケメン!すごいイケメン!

さて、パシフィック・リムと同日に見たのが「ワールド・ウォーZ」(以下WWZ)でした。
WWZを午前中に見、パシフィック・リムを午後に見るという濃度の高い日でした。

WWZは2D字幕で見たのですが、こちらは字幕の方が良かったです。
感情移入しまくりと思われる吹替に比べると割と俳優陣が淡々としているというか、英語のテンションが思ったより低いのでその温度差を意識したくなければ字幕で見るのが良いと思われます。

さて、ブラッド=ピット、略してブラピなあの方が私財を湯水のように投入して作られた映画と聞き及んでおりますこのWWZですが、Zとついていてもゾンビ映画だと思わないのは日本でわたしくらいだったのか、特に説明とかないんですけどゾンビ出ますよくらい言ってくれたっていいと思った。
いやZってついたら押しなべて全ての映画がゾンビ映画ジャンルになるくらいの甲斐性を持て!フェアレディもゾンビでいい!とか力説しようとしてフェアレディZ(ゼット)でなくてフェアレディ乙(おつ)だと思っていた人が過去にいたことを思い出しました。
しかし不自然なほどゾンビの雰囲気のないプロモで不思議に思ったのですが、原作は有名タイトル故にゾンビ映画であることはコモンセンスだったのですね。あと配給会社の意向でゾンビっていう単語使っちゃダメだったんか…というのは後から知りました。

ブラピ演じるジェリー・レインは過去は国連職員として危険地帯での任務などをこなす腕利きのエージェントだったようですが、現在は2人の娘と美しい妻のために朝からパンケーキを焼く主夫的な生活にしみじみと幸せを感じています。今日は家族4人で楽しくドライブ中。それが突然わけのわからない渋滞に巻き込まれてしまい、後ろから走ってきた白バイにサイドミラーをもぎ取られます。

ええ、サイドミラーをもぎ取られます。

ええ!?修理代は!?」というのが最初の感想です。サイドミラーがふっとんだというのに血色を変えた妻と違い、ジェリーは余裕ぶっこいて車の外に出てサイドミラーを拾います。もうここで常人と違う!メリケンは車の破損なんて日常茶飯事すぎて感覚がマヒしてるのか!?とか白バイだから文句いわねーのか!?とかいろいろな可能性がありますが既に非日常です。

ここまで5分。パシフィック・リムの開始5分で今までのいきさつを話し終わる速さもすげーのですが、WWZも負けじとスピード展開します。エヴァでいうと使徒を倒し終わってる感じです。

そして、いつもと少しだけ違うだけだったはずの交通渋滞が突如恐慌へと変わります。トラックが多くの車を押し流し、人々が逃げまどい、それでも何が起こっているかはわかりません。ジェリーは妻と娘を乗せて暴走トラックの後ろを走り出します。が、それも長く続かず交差点で横からぶつかられ、今度は徒歩で逃げだしますがその最中にこの恐慌の原因が、人であることを知ります。かつて人であったものが人を襲い、襲われた人間が人からナニカへ変貌を遂げるまでたった12秒。
乗り捨てられたキャンピングカーに乗り込みレイン一家は何とか逃亡しますが、そこに一本の電話がかかってきます。かつて国連職員だったジェリーに復帰を願う国連事務長のティエリーに、ジェリーはとにかく迎えが欲しいと頼みます。
そして始まる、かつて人だったゾンビとの戦い。

映画館の文字予告では「中国で発生した狂犬病が」と書いていたと思ったのですが、ゾンビの原因はどうやら狂犬病のような伝染病という想定のようです。
感染した人間は12秒でゾンビへと変貌し、身体能力が飛躍的に向上し、瞳孔が白濁し血管が浮き出ます。日にちが立つとどうやら腐敗もしているようです。そして他の「生きている」人間を牙で噛み付き襲います。音に敏感に反応し、近距離のゾンビの動向に共鳴し、意志も持たず休まず、沈静化すると休眠状態に入りただ彷徨うだけの存在になります。そしてかつて生きていた人間の状態には戻りません。
襲われた人間は12秒以内に処置を決めないと助かりませんが、ジェリーは人が襲われる様子を注意深く観察し助かるために必要な行動を学んでいくのです。

まずいろいろ突っ込みどころはありますが、今作のゾンビの概念は死というインターバルを挟まないので日本人からするとゾンビの感覚からほど遠い気がします。
正確に言うと、これはパンデミック映画だと思います。アウトブレイク+バイオハザードです。

かつて「アウトブレイク」という映画がありまして、わたしは中学生のときこの映画にめちゃくちゃはまって今も大好きなのですが、感染症の描写がかなりグロテスクなので同世代には非常に評判が悪い映画でした。これを学校の体育の時間に見たりしたわけなので、衛生観念とかウイルスという概念というものを認識するにはとてもよい教材だったことでしょう。WWZでもジェリーの観察眼が人類を救済に導くわけですが、解決ルートがアウトブレイク感すごい。そのまんまアウトブレイク。おサルが出てこないだけで。
その反面、WWZはアウトブレイクよりも、バイオハザードよりも全然グロくないのですが、その代わり花やしきも真っ青というお化け屋敷要素が詰まっています。というかほぼお化け屋敷です。スリルとしてはジュラシックパークです。「がおー」「キャー」というあのノリです。ゾンビの追尾能力が怖すぎてずっと指を咥えて震えて見ているしかないレベルです。空いてる映画館でよかったよう。肝が冷える効果は保証します。でも悲鳴あげたい場合にはDVD待って家で見た方がいいです。流石にゾンビの組体操はCGだとは思いますが、考えた人すごいです。ゾンビ映画はいろいろとロケーションの設定が大変そうですね。

なんというか、ゾンビというのは「くさったしたい」が起き上がって人を襲うから恐ろしかったのであって、「ゾンビという感染症」によって世界が崩壊するというのは狂犬病と変わりません。でもウォーキング・デッドシリーズなどもそうですが感染した結果人に戻れないという点では「死」ですから、新しいゾンビ世代というのは全て「肉体の死」ではなく「感染」を経るだけなのかもしれません。キリスト教的にはどうなんでしょうか。論理的には死を経ているので神の御許には到達できているのでしょうか。肉体が地獄にいるようなものだと思うのですけども。

映画の全体としては結構丁寧なつくりで、ジェリーが得られる解決への手がかりは同じように得られるのでそれは良かったと思います。つまり主人公しか知りえない事実描写というものがない。フィラデルフィアのマーケットで必要なものを手に入れた後、結局カートを手放して合流地点となるアパートに逃げるレイン一家の描写の中で、さっそく咳をしているホームレスというキーポイントがしっかり映っていたのが印象的でした。この時点で激しくネタバレです。襲われない人間が存在する、というヒントは視聴者にもきちんと示されています。

しかし、ジェリーの奥さんカリンもどこかのエージェントか!?というレベルで判断力を見せ、行動するのですがアメリカの奥様はみんなこんな感じなのですか?車の窓からゾンビに襲われそうな夫を守るためゾンビを殴り倒すとか咄嗟にはできませんのでわたしは何かの訓練をしたほうがいいんでしょうか。そうすると日本人のほとんどは何がしかの訓練が必要な軟弱民族になってしまうと思うのですが。マーケットでチンピラと物の取り合いで暴行されそうになったにも関わらず、やめて!とかイヤ!とかじゃなくて「取らないで!」と叫んでいたのもなんだかすごい気がします。特に指示なしでも自分で考えてしっかり動いてて新入社員の教育とかに使えそうです。発煙筒持たせたら天下一品です。でも極限状態で静かに逃げようとしているジェリーに電話してくるのやめてください。おかげで死人が出たのでフラグとはいえ「これだから妻は…」とか言われかねないのでやめたげてください!ていうかジェリーは電池なくなるんだから電源切っとけ!妻が鬼電するのを見ていたうちの旦那がキレそうになっていたのが感慨深い。

そして特筆すべきは勝手に死んだ希望の星ことウイルス学者と、エルサレムの常軌を逸した防衛方法でしょう。学者はどうも軽薄というかバカそうというか希望の星感は何もなかったのですが案の定自爆死したので噛ませ犬にすらならない割に、後に引用される名言「自然は“弱さ”を“強さ”と偽りたがる」を残したりしていたので侮れません。そしてエルサレムよ、「ゾンビが国に入ってくる前に壁を作る」のに成功してゾンビ締め出したんだから騒がないでちゃんと締め出せよ!それか内壁か屋根作って入れないようにしろよ!という突っ込みたいオブジェクトナンバーワンです。

あとは自称役立たずの割に死ぬほど活躍してるエルサレムの「左手ゾンビ断捨理」ことセガンちゃん、この手の健気な坊主の女兵士なおにゃのこは大好物なのですが拳銃を気軽にぶっ放しまくりで気が気ではありません。ここぞというときにぶっ放してるわけですけど、その後のノープラン感はかわゆさでカバー。いいよいいよこの世紀末感。慈悲もなくゾンビの頭に鉄玉ぶっこむのがワイルド。旅客機内でパイナップル振りかざすジェリーを信頼の目で見つめて見事生き残るところも良かったです。

そうそう、旅客機内でパイナップルです。
この映画はジェリーがずっとピンチなことは変わりませんが、そのピンチの度合いがどんどん高まることでスリルが演出されます。何とか逃げる、何とか逃げる、何とか旅客機に乗って脱出、その旅客機内にゾンビが居る→「えっ」てなるのは仕方ありません。旅客機内です。詰んだと思われます。一人ゾンビになれば終わる世界です。そこでろくな武器もなく、周りがどんどんゾンビになっていき、手元には女兵士の持ち物である手榴弾のみ。そこで投げるか投げないか、葛藤は一瞬で終えて判断しなければいけない限界状態。
この演出の高まり感はカオスなこの映画の中でも特に良いところだと思いました。やってはいけない、しかしやらなければ死ぬ。そのぎりぎりの選択を迫られるんですが、判断できる猶予はありません。そこで生き残る可能性に掛けて、一つの選択をする。
まあ旅客機の半分をパイナップルでブッ飛ばしてゾンビか人か分からないけど乗客をお空へさようなら、それでも墜落しても生き延びる確率を選ぶ、というのは日本映画ではありえないと思うので見られてよかったです。何というかそれ以外に形容しようがない。
ご都合主義で主人公が生き残るのは仕方ないですけど、ちゃんと(と言っていいのかどうか)怪我はしていたのでまあラッキーだけど普通の人でいいんだと思う。普通は死ぬ怪我ですけども。

あとジェリーが死んだかどうか確認もせずに妻と子供と途中でレイン一家を助けてくれた子供を放り出すティエリーの無能さとか、思いのほかちゃんと責任取ろうと行動してるWHOの責任者の意外な勇気とか、WHOの中で一番賢そうだった女性職員のかわゆさとか、後半へ行くにつれてしぼむ感じは否めないんですけどもペプシじゃなくてLevisでもよかったと思いつつ。あっでもジーンズだと自販機に入らないし音が出ないからゾンビ寄せできないのか。ダメか。

自分にとっての最強のゾンビは大槻ケンヂさんの少女ゾンビ小説「ステーシー」なのですが、そのステーシーの漫画版では一番最初に正気に戻ったステーシーであるモモが「今日の日はさようなら」を歌うシーンがあります。
ステーシーたちは元々は15歳から17歳の少女で、ある日突然死亡しその後短期間で起き上がった者がステーシーという意志のないゾンビになり人を食べる話です。人間たちはその少女たちを沈黙させるため、「再殺」を行います。再殺部隊の男たちは自分がかつて愛し、かつて殺した少女の面影を見出しながらステーシーを再殺します。
始まりも終わりもすごく理不尽な話なのですが、その理不尽さはこのWWZと共通のものだと感じます。ある日突然わけのわからない理由で、あるいは理由もなしに人が死ぬだけでなく、戦わなければならないのです。神様が気まぐれで今日そうしようと決めたのかもしれません。生きた人間には二度と戻れない、今日の日にさようなら。ゾンビ映画は永遠にその理不尽さを抱えるのでしょう。スタッフロールを見ながらそんなことを思いました。
まあ予算が足りなくて力尽きそうになったとか、グロ禁止令にて流血やらはらわたやら人食いシーンをおさわり禁止にしたとか、制作が遅れてラストシーンが差し替えになったとか後からいろいろ聞くと夢がないんですけど普通に面白かったです。ジェットコースターに長く乗れていたようなやり遂げた感。

最後に、ブラッド=ピットという俳優について。
わたしが今まで見てきたブラピ映画が恐らく悪いんだと思いますが、ニヤニヤしながらふらふらしてる役ばかりの俳優だと思っていました。スナッチとかMr&Mrsスミスとかがダメだったんだと思うんですけど。あとよく脱ぐなーと。今回は字幕で見たのも大きいのですが、表情の変化があまりなく硬い表情が多いのですがいい演技だと思いました。飄々と自分の推理を組み立て、世界をきちんと見つめ、家族のために戦う男として地に足のついたプロフェッショナルなエージェント、という雰囲気がよく出ていると思いました。逆に悲壮な顔をしたり、大声で騒いだりと悲劇の主人公型ではなかったところも静謐な感じで好きです。もしかしたら次作があるかも、とのことなので期待しています。と書いたそばから次作制作は決定していることを知り困惑しています。

でも、ゾンビの血液を飲んでしまったジェリーは何故12秒のルールを免れ得たんでしょうか?もしかして次作のヒント?
WHO建物内B棟でジェリーとタイマン張ったゾンビの俳優さんの演技力が素晴らしかったので、スタッフロールをきちんと見ると「WHOの建物内のゾンビ」とかきちんとキャスト付されているのを是非見てあげてください。

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