[海外ドラマ]SHERLOCK シーズン1 シーズン2

元々ベネディクト・カンバーバッチという俳優を初めて見たのは、イギリスBBC制作でジュリア・マッケンジー主演版の「ミス・マープル」のシーズン4に端役で出ていたときだと思うのですが、その時には全然意識しませんでした。
映画「つぐない」でも見ていたと思うのですが、これも全然覚えていません。テレビドラマ「法医学捜査班 silent witness」にも出ていましたがこれも見ていないか覚えていないか。
その後名前と顔を認識してなかなかいい俳優だなと思ったのは「裏切りのサーカス」という映画を見たときです。

「裏切りのサーカス」はタイトル自体を全然知らずに旦那が見たがったので見に行きましたが、イギリスの組織MI-5の内部から裏切り者を見つけ出すスパイ映画です。
そこで端役ながら存在感のある演技をしていたのが、ベネディクト・カンバーバッチその人なのでした。

スパイの部下として絶対にバレてはいけない二重スパイを演じていた彼はその役回りでは金髪の美しい白人青年(同性愛者で教師をやっていたパートナーと別れてしまい苦悩するシーンとかあって不毛)でしたが、次に見たときにはブルネットの天然パーマの激しい理知的なキチガイさんになっていました。
退屈なだけで部屋の壁を拳銃で撃って絵をかいたり、全裸にシーツだけでバッキンガム宮殿に行ったり、奇人変人通り越してちょっと頭のおかしい人…。しかし比類なき頭脳と、対象が限定されてはいますがとても優しい心とを持っています。
それこそが「SHERLOCK」です。
制作時期としては「SHERLOCK」が2010年公開、「裏切りのサーカス」は2011年公開ですので人気ブレイクを逆に見た形になります。

余談ですが、最近のベネさんはわたしに勝手にベネ坊さんとか呼ばれながらスター・トレックでは孤高の肉体派悪役を演じていたり、すっかり人気俳優なのでこれからも長く活躍してくれるといいなと思います。

イギリスBBCの2010年制作のヒット作「SHERLOCK」はかのシャーロック・ホームズの冒険譚を21世紀に置き換え現代版としてリメイクしたミステリです。
が、冒険譚をそのまま現代に合わせるのではなく新たな生活、新たなキャラクター、新たな犯罪で書き起こし、全く新しいドラマシリーズとなっています。
ホームズは鳥打帽やシルクハットは被らず、移動は電車とタクシー、本の代わりにブログを書き、BlackBerryやiPhoneといったデバイスを駆使し、GPSやメールを使い、電気給湯器で茶を沸かし、アヘンではなくタバコが辞められないのでニコチンパッチを堪能し、さらにアグレッシブにロンドンを駆け巡るようになっています。
シャーロック・ホームズをベネディクト・カンバーバッチが演じ、その相棒のジョン・ワトソンをロードオブザリングのスピンオフの「ホビットの冒険」の主演だったマーティン・フリーマンが演じています。

旧グラナダTV制作で、ジェレミー・ブレットが演じた「シャーロック・ホームズの冒険」(邦題)こそがシャーロッキアンのバイブルとなっていたテレビドラマ版ですが、新たな解釈でリメイクとは言い難い新しい仕上がりの「SHERLOCK」もなかなかの面白さだと思います。
グラナダ版や他のホームズと比較して見て個人的な意見としては、

■シャーロック・ホームズの詰めが甘い。原作やグラナダ版のホームズと比べると完璧さが足りず、その代わりに感情の発露が多めでおちゃめな感じ。興味のないものへの氷の態度は(ベネの演技が)すごい。棒読みで面白いこと言いまくる美形が立っていたら面白いですね。40代の上品な紳士ではなく、若さを残す有能な青年の印象。しかし極度のツンデレ。最初は誰得かと思うがそのうちどうでもよくなる。

■しかしベネディクト氏に音楽の素養があるのかないのかわかりませんが、ホームズらしくヴァイオリンは精々弾けているふりくらいしてもいいだろうと思わないでもないほど弾けてない。弓を動かしているだけいいのかもしれないけど曲のフレーズと合わせるくらいはしてもいいのではないか。これはジェレミー・ブレットも全くヴァイオリンを弾けなかったらしいものの、演技に死ぬほど時間をかけてそれらしく見せているのでそこはマネしてもよかったんではないかと思うです。

■ワトソンが異様に有能で強い。ホームズの説明を口を開けたままぽかーんと聞いているワトソンではなく、自分で考え自分なりにホームズに近づき、時には無言で彼の望みを汲み取って行動してくれる女好きイケメン。スリルを求める軍人といった一面も強い。しかしどんだけ彼女をとっかえひっかえするのか興味深い。公的には医者の仕事全然してる描写がなくて経済的に不安。本職がトライアスロンと格闘技とかでも違和感ない。デジタル機器とは相性悪い様子。

■ホームズとワトソンというよりも、シャーロックとジョンであり、とってもゲイくさいので劇中でも相当気にしているように見える。でも厳然として男の友情。でも共依存気味。別に腐ってなくてもシーズン2の最終話はひどい話なので泣いてしまうはず。

■下敷きにした原作をそのまま使いまわすのではなく、新解釈やパロディを織り交ぜてさらに進化したトリックで視聴者を(いい意味で)振り回してくれる。でも原作もしっかり踏まえているので思わずニヤっとする瞬間がある。見れば見るほど中毒性が増してしまい、見るのをやめられない。

■2009年公開の映画版シャーロック・ホームズ(ガイ・リッチー監督)のダメダメなおっさんホームズ(ロバート・ダウニー・Jr様)と凶暴なワトソン(ジュード・ロウ)とまた違ったダメさ、というかアグレッシブなくせにゆるいので暑苦しくないホームズをお求めの方!お勧めです!

■普段は非常に鬱陶しいハドソン夫人(一緒に住めないレベル)を死ぬほど愛している様子が垣間見えるシャーロックのツンデレ回はシーズン2第一話で非常によろしいです!アイリーンを救うオチのツンデレもよかったです!

といったところでしょうか。

ベネディクトの演技は最初はぎこちなさがありますが、ジョンに自分の名前と住所を告げた後ばっちんと大きなウインクを送ってくるところで「あれ、もしかしてこの人かわいいのかな…」という気持ちになります。冷たい爬虫類が自分だけに微笑んだような感覚です。次第にその対象がジョンであることに嫉妬して身もだえするんですけども。そのクールブルーな目に映るのはジョンだけなのね…みたいな悟りを得られるようになる頃には表情が見分けられるようになっていると思います。そのノリでスタートレック見に行きたいのをぐっと押さえる。

マーティンはとにかく新解釈なワトソンで、こういう面倒見のいい先輩がいたなあという兄貴っぷりです。他のホームズ作品に比べてもバカにされている頻度の低いワトソンなので割としっかり見ていられます。ジョンが困った顔から褒められてドヤ顔に変貌するのがいいです。でもホビットに見えて仕方ありません…。シーズン1第一話で鬱々と暮らしている→その後シャーロックと出会い地獄に舞い戻った赤鬼のようなイキイキとした各種活動→シーズン2最終話でまた泣くわ取り乱すわ鬱々とするわもうかわいそうで仕方ないです、シーズン3どうにかしてください、という心持になる素敵な俳優さんです。

ハドソンさんやレストレード警部を始め、原作ではキャラクター付の弱かった脇役も強烈なのがいいところ。部屋の冷蔵庫に死体を保管してる店子とか追い出しても仕方ないんだけど追い出さないハドソンさん天使マジ天使です。夜食持ってくるタイミングが最強なところもいい。レストレード警部はグラナダ版に比べるとかなり影が薄いのですが、ハードボイルド系イケメン枠でカバーです。でもあたまはよくない。しかたない。

シーズン1と2では宿敵モリアーティが、シーズン2ではホームズと唯一絡むことのできる女性(ハドソン夫人除く)であるアイリーン・アドラーも堂々登場します。

モリアーティは初登場の方法も意外性がありますが、何より見た目ギャップというか、どちらかというと薄気味悪いなよっとした男が希代の悪人であるモリアーティなんですよね。高い声、優しいまなざし、でもどこか人格のぶっ壊れた焦点の合わない眼。個人的にはオールバックの紳士風じゃないときの髪型が酷かったのでもっとイケメン枠で仕上げてやれよ!と思いましたがこれはこれでいいのでしょう。
原作では生きているモリアーティの出演は3回とほとんど出てきませんが、わたしの大好きなNHKアニメ「ホームズの冒険」(登場人物が全部犬のアニメ)ではモリアーティはドジでまぬけなおっさんでした。そのかわいいモリアーティに比べると、シャーロックでは単なる若い男の容姿を持ちながら純粋な悪の要素を感じます。「教授」という老獪さはないけども、若さゆえの狂気、その思い上がった傲慢と無感動な様子は空虚で利己的な若者という器がぴったりです。
シーズン2の最終話では実質一人三役(犯罪を自ら実行するが根回しして無罪を勝ち取る異常者、タクシー運転手、芝居のお兄さん)とか演じていますし、英語がなんだかもこもこしていてものすごおおおおおく聞き取りにくい声なのですがその分異常な感じがしますし、そもそも瞳孔開いてる演出なのか光彩のない黒目が怖い…。演じておられるアンドリュー・スコットという俳優さんの演技力の底力をひしひしと感じます。ヘビのような気持ち悪さです(褒め言葉)。怪演が光ります。

アイリーンはその美しさ、ではなく天性の知性でシャーロックに興味を持たせますが、モリアーティの助力あっての部分で安い女に堕ちてしまうシーンであっても見苦しさがなくてとてもよかったです。恋はうそをつかないんですねー。シーズン2第一話のみの登場のようですが、逃げ延びるトリックも最強にロマンティックというかイカしているというか恋っていいな!(総括)
全裸の美人を見るときシャーロックの分析機能がぶっ壊れて?????しか出てこないのも男らしくて(?)とっても良かったです。携帯のロック解除パスワードのオチも”SHERLOCK”という単語ならではで何だかジーンと来ました。製作陣がめちゃくちゃ楽しみながら作ってますねー。

原作では悪名高くホームズ以上の頭脳の持ち主でありながらガチムチ系引きこもり役人であり、シャーロックの兄であるマイクロフト・ホームズも重要な役回りです。そんでマイクロフト役の俳優さんは制作総指揮兼脚本だったりしますのでマジ最強です。
でも国家と弟を天秤にかけると弟が軽くなっちゃう人。仲悪い原因の大体が自分が悪い癖に「兄弟いろいろあったからアハハ」みたいなので澄ましちゃう人。憎めないし立場上仕方ないのですが、この人が兄弟でなければ…!と思うシーンが多すぎる極悪人なので必見です。

あと、忘れてはいけないのがモリーという検視医の女性です。この方は宿敵モリアーティを無意識に取り込んでしまったり、シャーロックが好きで仕方ないくせに彼氏を作る努力をしてしまったりする、性格は良いけれど天然でうじうじしていて大体の行動が裏目に出るという鬱陶しい恋愛脳女子でございます。しかしシャーロックを人間的に愛し、その助力を願う力は天下一品なんではないでしょうか。それがわかるのはシーズン2の最終話なんですけども、シャーロックに全く恋心を気づいてもらえない自己評価低すぎなネガティブ系ゆるふわ女というレッテルを乗り越える過程がすげえ鬱陶しい。でも最終的にはとてもいい子なんですよね。このキャラクターの採用はすごく現代的でよくできていると思います。たとえ後々のトリックに必要なだけだったとしても、モリーの出演シーンは重要なんです。最初は「何この要らない子…!(白目)」とか思うんですけど絶対に必要ないい子です。

そんなこんなでシャーロック・ホームズの原作もグラナダ版も知らなくても十分楽しめると思いますので、興味のある方は是非見てみてはいかがでしょうか!

※各話の簡単なあらすじとかつけようとしたら軽く死ねる長さなので別途挑戦したいと思います。

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