[海外ドラマ]MAD DOGS マッドドッグ マジョルカの罠

全4話。AXNミステリーチャンネルで試聴。
実は第2話を寝落ちしてあまり覚えていないんですけどー。
原題は「MAD DOGS」なのに何故邦題は単数にした。

イギリスBBC制作のミステリーサスペンス。
ミステリーチャンネル常連なら、必ずどこかで何故か見た!という俳優が楽しそうに死体を囲んで喧嘩してる小学生の学芸会のようなブラック脚本。
とある事件により企業弁護士の身分を捨て現在骨董屋のバックスは、「Life On Mars」のさまよえる主人公や「ステートオブプレイ」の洒脱な天才を演じたジョン・シム。
心理学の講師でバツイチのクインは「Life On Mars」の主人公の永遠のタイムトリップの中で鬼上司を演じたフィリップ・グレニスター。
失業中で元彼女の自殺に今も捕われたままのウディは、「生存者たち」では恐ろしい殺人鬼でありながら物語の中心に食い込んでいく犯罪者を演じたマックス・ビースレイ。
財務コンサルタントでクインの元彼女を妻としたリックは、「華麗なるペテン師たち」で下っ端でありながらハングリーに詐欺スキルを磨く青年を演じたマーク・ウォーレン。

大学の同級生で、スペインのマジョルカ島で既にアーリーリタイアして優雅に暮らすアルボ(ベン・チャップリン)がこの4人を同窓会と称して呼び出し事件が起きます。
大学の同級生5人が楽しく同窓会をしようとしたら何故か4人に減ったり死体を処分したり麻薬を売ったりしてたら殺されかける…と書くとまったくわかりません。

今話題の現代版「シャーロック」もですが、イギリスBBCがこんなに面白いドラマを作るようになるとは思ってもいませんでした。
ギャグ…というよりエスプリ、ブラックユーモアを解する制作陣や脚本家が突然そろったようにも見えます。
敢えてイギリス本土ではなく、イギリス人の誰もが今すぐ仕事を投げて逃げてしまいたい!という避暑地ナンバーワンらしいといううわさのマジョルカ・イビサ・メノルカを舞台にしているところも思い切っているように思います。(イギリス人がぶつぶつこぼしていたので避暑地としては有名なようです)
やはり外人にとっても夏の海外はハメをはずすもの、麻薬と女と酒を堪能すべきもの、というように描かれています。

内容ですが、ホラー・サスペンス枠で始まり確かに興味を引くのですが、出演俳優が大好きな人が見るとどちらかというとブラックコメディの要素が強いと思います。
麻薬をめぐる決断、その見返りと共に忍び寄る死の影。
息をつく余裕もない緊張の中ですが、主人公たち4人の葛藤、生きていく苦しさ、人間関係の摩擦などが繊細に描かれ…と思いきや、突然誰かがキレ始めると全員逆切れ、「もうバラバラにやろうぜ!」と言って別れた直後に何故か合流、見た目はいかついおっさんたちですが中学生くらいの男子の寄せ集めのようなつるみ方です。
人を傷つけたり殺したりする過程に目的や思考はなく、いつも行動してから「なんでこんなことしたんだ」という口論を経て無駄な消耗。
それでも前に進もうとする4人のまぶしいほどのバイタリティ、エネルギーで物語が進みます。

彼らは彼らなりに閉塞した状況にいるのですが、それを突き抜けるような青い空、燃える太陽、見渡す限り終わりのない海がいつも取り囲んでいます。
日本の「目に見えない檻」に捕われて息も絶え絶えに社畜として生きるサラリーマンが見たら泣いてしまいそうな美しい世界です。

シーズン1では「マジョルカ」が描かれますが、この物語はシーズン2が前提に書かれているので、もし興味を持たれた方は是非シーズン2も見られる状態で鑑賞されると良いと思います。
第四話の終わり、悪徳警官を撃ち殺してしまったクインが、往年のヘヴィメタバンドKISSも真っ青の白塗りメイクのまますべてを引き受ける覚悟で仲間を逃がします。
そのまま死体からあふれ出る血が漂うプールへ飛び込むクイン。
アルボの屋敷の外には彼らの命を狙う殺し屋が来ていて、今まさに屋敷に乗り込まんとしています。
クインを残したバックス、リック、ウディはレンタカーの中で「これではいけない!」と叫び、シーズン2に続く。

実はHuluでもこのMAD DOGSを楽しむことができるので、これを機にHuluに入会するか大変迷っています。
イギリスBBCが本当におもしろくなってきたので、海外ドラマが楽しくて仕方がない!という方は是非見てみてはいかがでしょうか。